2017年5月15日月曜日

(第4回研究会) 立教大学異文化コミュニケーション学部主催公開講演会 2017.7.8.

【日時】
2017年7月8日(土)14:00~17:00 【終了】

【場所】



【テーマ】



【内容】
シャーマンとは、変性意識の状態に入ってこの世とあの世、目に見える世界と目に見えない世界を自在に行き来し、占いや託宣、病気治しなどを行う職能者のことである。人間であるシャーマンが非―人間としての霊的存在と霊的な力を統御することで人間および人間社会に深い影響をもたらす宗教文化的な制度が、シャーマニズムに他ならない。シャーマニズムは過去の遺物ではなく、今日でも世界中で広く行われている。シャーマンによる儀礼実践はこれまで、シャーマンと霊的存在との争いや交渉が人間同士の社会関係のモデルによって隠喩的かつ象徴的に説明されるか、もしくは、そうした心的表象の次元が不問のまま、社会的な動向との関係において分析される傾向にあった。それに対して、シャーマンが霊界へと飛翔し、邪霊から病者の霊魂を取り戻す場面で、人々がまさにそこで起きていることを心の中に思い抱くという面には、あまり注意が払われてこなかった。人々は思考に先立って世界に直接触れながら、「世界―内―存在」として、シャーマニズムそれ自体が立ち上がる情況のうちにいる。近年のいわゆる存在論の人類学は、アニミズムやシャーマニズムを含む宗教文化的な実践を「真剣に受け取る(taking seriously)」という現象学的な人類学のアプローチを重んじる。シャーマニズムに関わる人々の世界への能動的ないしは受動的な参加を「真剣に受け取る」ならば、シャーマニズムを新たな光の下に照らし出すことができるだろう。本公開講演会では、シャーマニズムの存在論を問う視座から、日本、モンゴル、マヤのシャーマニズムを取り上げて再評価し、宗教人類学の課題と展望を示したい。

(公開講演会の使用言語は日本語。一部モンゴル語からの通訳有。)


【プログラム】(すべて仮題)

趣旨説明・司会 奥野克巳(立教大学・異文化コミュニケーション学部)


発表1
佐藤壮広(立教大学、宗教情報センター)
土地の記憶をつなぐ民間巫者:戦後沖縄社会とユタの語り
発表2
都馬バイカル(桜美林大学・リベラルアーツ学群)
モンゴルの祖先崇拝:潜在するシャーマニズム
発表3
実松克義(立教大学・名誉教授)
マヤの十字架マヤ・シャーマニズムにおける生命の樹と人間存在の探究
発表4
チロンバートル(モンゴル国立大学/立教大学招へい研究員)
モンゴルのシャーマンの霊力について




【その他】
参加費:無料
事前申し込み:不要

【問い合わせ先】
立教大学・学部事務4課 異文化コミュニケーション学部担当(03-3985-4824)

・奥野克巳 katsumiokuno[アットマーク]rikkyo.ac.jp 
・佐藤壮広 callsato[アットマーク]gmail.com
*スパムメール対策のため、[アットマーク]を@に代えてください。



【公開講演会を終えて】
 まずは、シャーマニズムを「多文化主義」から引き剥がし、「多自然的宇宙」の中に位置づけて、それを真剣に受け取ることの意義についての趣旨説明がなされた(奥野克巳)。

  発表1では、シャーマニズムを真剣に受け取るために用意された「巫者新聞」が仮想的に呈示され、身体と沖縄の地図を重ね合わせる第二次大戦後を生きるユタの現代の創造性が論じられた(佐藤壮広「土地の記憶をつなぐ民間巫者:戦後沖縄社会とユタの語り」)。

  発表2では、仏教の浸透や国家体制により消失したかのように見える内蒙古のシャーマニズムが、現代の人間だけでなく家畜を対象とする人々の行為の中に色濃く見られるという指摘がなされた(都馬バイカル「モンゴルの祖先崇拝:潜在するシャーマニズム」)。

  発表3では、伝統的に十字架を用いるマヤの人々の日々の儀礼実践の中に、現世と他界のバウンダリーを超えて、人間存在の本質に接近するマヤ存在論があり、それが私たちに何をもたらしてくれるのかに関する一つの見通しが示された(実松克義「マヤの十字架・マヤ・シャーマニズムにおける生命の樹と人間存在の探究」)。

  発表4では、モンゴルのシャーマニズムはこれまで、シャーマンの霊力を真剣に受け取る人々の態度に支えられていたことを意識しながら、そのエネルギーの本質を探る試みがなされるべきであるとされた(チロンバートル「モンゴルのシャーマンの霊力について」)。

  4人の発表に続いて、特別コメンテーターである斎藤英喜さん(佛教大学)による全体の趣旨の問題意識および各発表への質疑とともに、シャーマニズムが社会構造だけでなく、祖先神や最高神につながるありさまへの着目が真剣に受け取ることにつながるのではないかという指摘がなされた。

  その後、フロアーから、沖縄シャーマニズムの「創造」の問題、シャーマニズムを真剣に受け取ることとカントの悟性と感性の相関、ヨーロッパにおけるシャーマニズム、仏教とモンゴルのシャーマニズムの関係などについて、質疑が寄せられるとともに、それらへの応答がなされた。

  参加者は、全部で65名であった。



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